ーパー型人間
案内え
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 日曜日の朝、商店街の文具店へ行った。
 ガラス戸を開けて 「お早うございます」 と挨拶をしながら店に入った。
 カウンターにいた五十過ぎのおばさんが、 何故か不意を喰らったように戸惑いながら
 「あっ、はい」 とあいまいに答えた。  
 わたしは、 この人を動揺させることはしていない。
 店の時計は、10時少し前だった。
..「あのう 『こんにちは』 でしたか」
.
..表情を直したおばさんが、
. 「いいえ、そうではないのです。そのように挨拶してくれるとは思わなかったのです」
 わたしの方が、 たまげたくなる ご返答だった
 まさか、押しこみ の類に見られたとは思わないが、憤りも感じて、
 「どういうこと ?」 と尋ねてみた。
 人馴れ口調になったおばさんがいうには、
 「近頃のお客さんは、黙って入って来て、店番の私が居るのが分かりながらも、挨拶もせ
ずに、店を見まわしたり、買う気もない品物を手にしてみたりします。 『不躾な』 と思う
のですが、その客にはそれが普通なんですよ」
 「そうなんですか」
 おばさんのいう、「不躾人間に」に見られていたと思うが、取りあえず合わせて置いた。
..
 「『スーパーぐせですよ』スーパーマーケットでは、誰にも挨拶はいらない。 欲しい物を黙
って集めて、レジに出すだけでことが足りるのです」
 「そうですね」
 「声のかけ方も変わりましたよ。『スイマセーン』と言います。
 わたしは『こんにちは、暑いですね』 のように、 時分の挨拶に話しかけを付けてくれる
のが好きなのです」
  なる程、挨拶にも えりこのみがあるのか。
  まだ続きそうだつたが、唐突に、
 「あのう 包装紙を」
 と要件を告げて話題から逃げた。
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 店を出て気付いたことだが、あのおばさんも 相当なスーパーマーケット型人間だ。
 客を迎える挨拶はなく、注視するだけのようだ。 
 黙って入ってきた客と、「だんまり」の時間はどの様に経過するのか、想像出来ない。
 店番であれば、客に挨拶で迎えるのが普通だと思うし、小店舗のかみさんなら口数の多い
ほうが親しみやすいのではないか。
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挨拶なんて 潤滑油ですから口に任せておけば済むことも多いです。 
....「こんちは . .....暑いですね」
....「そうですねぇ お盆だと言うのにねぇ 」
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..
大阪弁では
 「おでかけでつか」
 「ちょっと そこまで」
 「よろしおまんなー」
これが挨拶です
おわり