か え る く ん

案内え
4月のある日に ベランダ-の下から カエルが1匹飛び出した
それが着地した位置から動こうとしない その所は小石を敷き詰
めた 日当たりで足もとの小石も 大分暖かくなってカエルの薄
っぺらな足の皮膚には心地よいとは思えない
もう2回もジャンプすると 植木棚の影があるのに 何か呪術に
でもかかったように 動かない
 それ陰に入りなよ
と 背中を指で押してやっても 押された分だけ体が揺れただけで
足は動いていない
 強情なやつめ
と 叱ると ちらっ とこちらを見たようだが 口を尖らせたまま
黙っている  自分も 親や教師に こんな態度を見せたこと
があったように思えていやな感じがした お前のせいだぞ 
そうだ 去年も来たカエルだろう その態度でわかるよ
お前の仲間はみな同じような顔で 同じような服装なので見
分けができないが お前だけはわかる
いつも夜になると どこかえ出ていき 翌朝人が起きだす前に帰ってきて棚の上の鉢植えの木に登って目玉
だけを一回ぐらい動かすんだ 孫娘が聞くのだ
 どうして 棚の上まで登れたの
わからん 棚の上までは80cmもある 脚部はコンクリートブロックなので 手足の吸盤も使えないと思うし 
力んで ハイジヤンプをこころみても せいぜい30cmだと思う 孫には何か答えないと70年生きてきた価値 
がない
.
 秘密だけど 夜中にカブトムシに乗って登るんだ
孫は中学生だからうそだと言う これで爺はうそつきだとばれた 
お前のせいだぞ
日中は 暑いだろうと如雨露で水をかけてやってもしらんぷりで
 おかまいなく
といってる顔つきだ 人間の好意を汲み取れないやつだ 
トレーに水を張って水遊びがてできるようにしても 見向きもしない
 おかまいなく
と言ってる顔つきだ
.                          
今年も 日中の居場所は木の上だ 梅の時もある サツキもある 護身策だと思うが
干からびちゃうよ 亀の甲羅干しはあるが カエルの日光浴はあまり聞かないほか
の連中もそうしているんかね
夜はどこに行くのかな 去年のうちに親しくした ケロコの家へでも行くのかな 2匹
で 登れる木を置いとくから 連れておいで 女のカエルの顔を見てみたいんだ
言っとくがカエルの木登りなんて およそ不格好なんだよ ケロコが見たら恥ずかし
がって逃げ出すかも知れんよ 写真を見せてあげるから よーく考えな
.
もしも ケコが来て高いところがいいと言っても 棚や鉢に登れなかった
らかわいそうなので スロープや階段を作ってやるから使えばいい
お前も普段から使えば楽だとおもうよ
 おかまいなく
いやーなやつだよ その顔しかないんだろうが ケロッと鳴いて見るとか
手を振って見せるとか やり方があるだろう
朝出会ったときは ペコリと頭を下げるとか 挨拶ってそんなに手間のか
かることではないが 大事なことだよ
この辺にいる40才嬢が未だに 挨拶ができないと言って おばさん連中では問題にしているよそんなもんだ
お前のことを 孫娘が かわいい と頭をなでた時もその顔だった ケロッとした顔の語源はその顔だ。
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ある日 お隣の奥さんが カエルクンがうちの水槽で遊んでるよ と教えてくれた
馬鹿なやつだ うちでは水なんか関係がないようなオカマイナクフエースのくせに
他家の水が嬉しいのか 無重力圏で浮かんでるような だらん として ぷかーと 
ちっとも動かない姿が想像できる
.
やっぱり お前はカエルだから 水にもぐったり 泳いだりして見たいだろう
教えてやろう 朝 お日さんの出る方の3軒むこうに 田植えの終わった水田がある
ので遊んでおいで 広いよ 周囲を一気に泳ぎきれないと思う ケロコも誘っていって
おいで ただし道路際は子供が手網を持ってねらってるから3mは離れた方が安全だ
おたまじゃくしが わーっと 歓迎してくれるだろう
遊びつかれたら ぴょん ぴょんと 帰っておいで いろんな木を集めて棚に並べて
おいてやるから 水田のそばの道路は車が走るから 横断するときは左右の安全確認が大事だ 右よし左よし
の指差呼称はできるかな 指があるだろうが
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夏真っ盛りのころ 一度出かけると幾日も帰らないことがよくある こちらが忘れた頃の朝 植木鉢の木に登って
例の オカマイナクフエースしている
何回かそんなことがあってから ずーと 帰らなくなった 今年の4月にまた出てくるかと わずかに期待していた
が来ない
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去年の夏過ぎに近所の奥さんが言われたことは ほんとだったか 
そんなことはない  また 木に登りにくるよ
サツキにはいい枝が出た 梅も 桃も 観音竹もある みんな棚に並んでる
今度は もっと大きな木で 高いところに登って見ようよ 桜も 紅葉もあるよ 
今ヒラドがよく咲いている
. おわり          ページのはじめに戻る