たぬき と きつね
案内
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         どんぐり山、  やまが村
家は  18けん
すんでる人は  おとなが38にん
          こどもは23人
牛は 12とう   ぶたは 21とう
犬と ねこと たぬき  .
むかし あるところに どんぐり山 という山がありました。 
この山には どんぐりの みがたくさん みのることから いろんな どうぶつがすんで
います。 いちばん大きいのは シカ です。 ちいさいのは リス とか ノネズミ です。 
みんな なかよしで、 ときどき あつまっては たのしい はなしを はっぴょうしておお
わらいしている ゆかいな なかまです。       
きつねも たぬきも 山のなかまどうしなので であうと きがるに
 「ポンさん  げんきか」   「コンさん おはよう」
とか あいさつができるほどの いいおともだちです。  
 きつねのほうが せんぱいで いろんなものにぱけたり ひとを ばかすのがじまん
すが、すこしわるさをしたがる くせ があります。
きょうも、ばかしあそび をしたくなったので、 たぬき をつれて山のうえから むらの
ようすをみていると、 となりむら のほうから むらやく のおじいさんが、こちらにむ
かってあるいてくるのが みえます。 
きつねは むらのようすも、 よくしっているので、
 「ごろうさんちの おじいさんだ、 きょうはこの人にしょう」。 といって いたずら
の あいてにきめました。 
おじいさんは、 となりのむらから ようじをすませて かえりみちだったのです。
おじいさんのうちでは、6年生の ごろうさんが おじいさんのかえりを まっている
のですが、 いつもより おそくなっているのが しんぱいになlり むかえにいきました。
みちは いつもとおる いっぽんみちなので まようことはありません。 
おじぞうさん までくると、すこし いそぎあしでかえってくる おじいさんがみえました。
ごろうさんも おじいさんのほうにあるいて まじかくなったので
「おかえり おつかれでした」。
といおうとすると、おじいさんは みむきもしないで フイに クルッと
むこうむきになって、いま きたみちを もどっていきます。
ごろうさんは たちどままってみていると、なにかをさがすようすも
なく、あるいていた おじいさんが むこうのほうでまた、 クルッと
むきをかえて さっきとおなじように こちらにあるいてきます。
おじいさんは おなじみちを いったり きたりして ずーと あるきつづ 
けていたのです。 
ごろうさんには、 「いたずらきつね」 の しわざと わかったので、
 「きょうはおもいっきり とっちめてやろう」と、やきゅう のボールぐらいの大きさ
いしをひろって、 たんぼのなかの あぜみちを山にちかずき うすぐらくなった
あたりをみまわすと 大きな きのねもとに きつねのしっぽがみえました。  
. このしっぽの ふりぐあいで いろいろな ばかしあそび ができるのです。 きょうは
おじいさんに  じゅもん をかけて ロボットを あやつるハンドルのように しっぽを
うごかして いたずらをしているのです。
しっぽを むこうに「ピュッ」と うごかすと おじいさんは 「クルッ」と むきをかえて
むこうに あるきはじめ しっぽをこちらにふると 「クルッ」とむきが かわるのです。
ごろうさんが、くさや きにかくれながら きつねにちかずきます。 
きつねは、 ごろうさんがくるのを、もっとはやくからきづいていて、 あぶなくなった
らにげようと、みみとはなで ようすをうかがっています。
なげた いしが きつねに とどくところまでちかずいたので、いしをもった てをふり 
げました。 とたんに、きつねは、ダッダッダッと とびだして山のうえのほうに すば
やいはしりで にげました。 
ふいだったので、あわててなげたいしが きつねのにげた
あとにおちただけです。
きつねは いったんとまって ごろうさんのかおをみてから
ゆっくりと くさむらにかくれました。   
あるいていた おじいさんは、ちょっと たちどまって あたりをみてくびをかしげてから  
.. むらのほうえあるきだしました。 ごろうさんが ちかくにきていることも しらなかっ
. といいました。
. これをみていた たぬきは「やっぱり、こんちゃんはえらいなぁ」 とかんしんしています。
すみかにかえった きつねは なかまをあつめて とくいげに このはなしをしてみん
なを わらわせています。 
なかまたちも きつねの 「いたずらはなし」 がだいすきなのです。
.
たぬきも きつねのように人をだまして あそびたいのですが、まだなににも ば
けることができないのです。 山では、 
 「たぬきのくせに なんにも ばけれない」。 とひそかに わらわれているのです。
たぬきは あせって きつね にであうたびに
 「ばけかたをおしえて」 とたのむのですが いつも 「そのうちに」 とゆうだけ  
おしえてはくれません。 たぬきのほうが じょうずになると じふんの にんき が
. なくなるのが しんぱいなのです。 .
あるひ、たぬきは きつねの大こうぶつの あぶらあげ をてみやげに もっていって、
 「どうか、ばけかたをおしえてください」。 とていねいにたのみました。
きつねは あぶらあげをたべながら、 しばらく かんがえていましたが、
 「おまえも おとなになるので おしえてやるが、そのかわりに まいにち、おじぞうさんに
そなえられた おだんご やおかしをとってきて おれにさしだせ」。 というのです。
たぬきはしょうじきもので ぬすむことがだいきら
いですが、それよりもおとなになって なににもば
けれないと 山のなかまのなかで はじになり、山
おれなくなるので きつねの ゆうとおりにする
ことにしました。
あくるひから たぬきは はやくおきて おじぞうさんのちかくの くさむらにかくれて
おばあさが おそなえものをもってくるのを まちかまえています。 
おばあさんは いつもの じかんにきて おそうじをしてから、 おそなえもの をあげて  
いつものように 「ぶつぶつ」と おねがいやら おいのりをします。 
たぬきは どきどき しながら おばあさんが かえるのを みとどけると ようじんぶ
かく おじぞうさん にちかずいて、 ピョコン とおじぎをして「いただきます」 といっ
ておじぞうさんの へんじ がないのを いいことに すばやくおそなえものをよこどりし
て いちもくさんに にげかえりました。
おそなえものを ねらっているのは ほかに からすや のらのわんこうや もうちょっ
おくれると むらのやんちゃこぞうが、あたりまえのように おそなえものを たべ
てしまうので ゆだんはできません。
まいにちまいにち ばかしょうじきのたぬきは じぶんがすこしもたべようとせずに
ぬすんだ おそなえものを きつねに はこびますが、 きつねは ほんのすこししかおし
えないでいつもごろごろと ねてばかりです。 
ぜんぶ おしえてしまうと たぬきが そなえものを はこばなくなる からです。 
たぬきは まいにち べんきようをして いしころ ぐらいには ばけられるようになり
ました。 それをしった きつねは もっと よくふかいことを かんがえだしていました。 
あるひ たぬきをよびだして
 「おじぞうさんに ばけかたをおしえてやろう」。 といってどんぐりの きのはをあた  
まにのせて、 おじぞうさんのすがたを おもいえがきながら、 
 「『ゴロンパッ』 とじゅもんをとなえながら でんぐりがえりをするように」。
と おしえました。
たぬきは そのとおりにしてみましたが、 ばけられません。 どうしてかな、となん
にちもかんがえました。 きつねにたずねても おしえてくれません。 いっしょうけ
んめいになって かんがえると ヒラメキがでるものです。
おじぞうさんのすがたを じぶんが おぼえこみかたがたりない ことにきがついた 
のです。 まえからだけでなく うしろすがたも みぎからも ひだりからも あたまの
うえから きている ころもの しわのぐあいまで、 さらにながい きかんをかけてお
ぼえこみ いつでも ぜんぶ おもいだせるようになっていました。 
                                
さすがの きつねも このきほんが みにつくまで、「よくがんばった」 とほめました
たぬきは ほめられたのがうれしくて はらのかわが ピンとはったよなかんじがした
ので たたいてみると  ポンッ といぜんとちがった すんだいいおとがしました。
きつねにすすめられて ゴロンをやることにしましたが、まだ じしんがありません。 
それでもめをとじて おじぞうさんのすがたをなんべんも あたまにかきこんでいると
きつね は きのは をくれて 「大丈夫だから」 といってくれました。  
ちょっとふるえたこえで それでもいっしょうけんめいのこえで 「ゴロンパッ」ととな
えておもいきつて、でんぐりをしました。 
いっかいてんして すっと たちあがったときにからだにくうきがはいったようなき
がして てや あしをみますと ころもをきた おじぞうさんにかわっていたのです。 
いいあらわせられないほど うれしくてなみだがでそうになりましたが、おじぞうさん 
のめからは なみだはでません。 ふいにかけだして、みずのみばにいき
すいめんにじぶんをうつしてみました。 すみきったみずに あおぞらがうつっている 
てまえにおじぞうさんのかおがうつっています。 大きなおじぞうさんでなく こども
のようなちいさくてかわいいおじどうさんがうつってみえました。
たぬきは 「うまれてから こんなうれしいことは はじめてだ」。 といってよろこび
ました
きつねもよろこんで しばらくかんがえてから、たぬきに
 「あしたから そのすがたで おじぞうさんの となりにたってなさい」。といいつけました。
たぬきは なぜかわからないまま、あさはやくから こどもじぞうさんにばけて おじどう
さんのとなりにたっていると、いつものじかんにおば 
あさんが おそなえをもってきてこどものじぞうさん
がいるのをみてびっくりしましたが、
 「ありがたいことだ」と よろこんで おそなえもの
もう ひとつもってきて「ぶつぶつ」とねがいごとをし
てかえりました。たぬきは あしが ふるえています。 
ようすをみていた きつねがすぐにおばあさんに
ばけて たぬきのおじぞうさんのまえで、おねがいをするふりをしてちいさなこえで
 「おそなえものを ふたつとも もってこい」。 
といいつけると パッ とみえなくなりました。
たぬきはもつと いろんなものにばけたいので きつねの いいつけどうりにまいにちふた
つのおそなえを、なにもしない きつねにとどけていました。
きつねは じぶんのあたまのよいことにまんぞくして まえよりもはたらきません。
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きょうも おじぞうさんになりすましてたっていると おばあさんがおだんごをおそなえ
してかえりました。 たぬきは もう しゅうかんになっていて わるいことだ、ともおもは
なくなり ふたつのおそなえを ぬすんでは すこしだけあたりをみて だれもいないのを
たしかかめてからでんぐりをし たぬきにもどって くさむらにかくれながらかえりました。
  
おばあさんは かえるとちゅうで まご がねつをだしているのをおもいだして びょうきが
なおるように おじぞうさんにおねがいしようと、いそいでひきかえしてきて こしがぬける
ほどびっくりしました。 
こどもじぞうさんもいなくなり、いまあげたばかりの おそなえがなくなっています。  
これはただごとではない 「だいじけんだ」と 大いそぎで むらやくをしている ごろうさ
んの おじいさんにはなしたところ おじいさんはわらいながら、  
 「山のいたずらものに ばかされとったがや」。 
といって じぶんもいぜんに ばかされたのをおもいだしながら、 ふたりでそうだんをして 
つぎのひに みはりばんをすることにしました。
そのひ おばあさんはいつもよりはやく おまいりにきて おじいさんとくさむらにかくれてみ 
ていると、山のほうから たぬきがやってきて おじぞうさんのまえで キョロキョロ とまわり
をみまわしてから どんぐりのはを いちまいあたまにのせて 「ゴロンパッ」 とじゅもんをとな
えて でんぐりがえりをすると、たぬきが おじぞうさんにばけたので おじいさんも おばあさ
んも 「うへっ」 とおどろきました
それでも おばあさんは しらんぷりで そうじをして おだんごをそなえていつものよう
に 「ぶつぶつ」 とねがいごとをいってかえりました。
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おじいさんが むらの人たちとそうだんして たぬきをつかまえる さくせんができました。
おばあさんは いつもよりおいしい おだんごをそなえて むらの人たちとくさむらにかくれ
てみていると たぬきがやってきて あたりを キョロキョロ みてから あしもとにおちて 
いた どんぐりの きのはをあたまにのせて 「ゴロンパッ」 とじゅもんをとなえながら いきお 
いよく でんぐりがえりをしたのですが。 どうしたことか いつものように おじぞうさんに 
はなれれないのです。                            
たぬきは くびをかしげています。 なにか かんがえてから、 また 「ゴロンパッ」 とこえ
をだして でんぐりかえったのでが やっぱり ばけられないのです。
それから なんかいも でんぐりがえりをやってみたのですが、 おじぞうさんになれません。   
くさむらでみていた おじいさんや おばぁさんは おかしさをこらえていました。
たぬきは まだ くりかえしなんかいもやっていますが ばけられないのです。
もう おばあさんが、おまいりにくるじかんになりす。 たぬきがあせっていますが なんか
い やっても、 いつものように ばけることができないのです。 
もう つかれて でんぐりがえり のちからがなくなってきました。  
それでも ありったけの こえをだして、  
 「 ゴロン パッ 」
とさけび ありったけの ちからをだしてでんぐりがえりをしましたが、 かいてん ふそくで 
じめんに あたまをぶちあてて、めをまわしてしまいました。
おじいさんが あいず をするとあちこちのくさむらから むらの人たちが いっせいにとび
ゴロン パッ
        ゴッチーン
   
あツ
 イタタタタ
    
       
 キュー
だして、ぐったりとなったたぬきを やすやすととらえて、ちかくの きにしばりつけました。 
しょうきにもどった たぬきに おじいさんは わらいながらいいました。
 「おまえがあたまにのせた どんぐりの は ゆんべ おばあさんがかみでつくった 
にせものだ。 ほいだで いっくら でんぐりしても ばけれんのじゃ」。 
おじいさんも おばあさんも むらの人たちもおおわらいです。
たぬきは いろいろと にんげんをばかせたら たのしいだろうなぁ とか山のなかまたちに
じまんできると、いっしょうけんめい べんきょうして れんしゅうしたのに けっかは にん
げんにだまされて くやしがったり なさけなかったりして おおごえでなきだしました。 
むらの人たちが くちぐちに、  
 「たぬきじる にしてくってやろうか」 とか 「うさぎのしっぽと とりかえるぞ」と お
どかされて 「たいへんなことになった」と きずくと どっとひやあせがでてきて
まじめにあやまり 「これからはぜったいにわるさはしません」。と ちかいました。
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むらの人たちは たぬきにあんないさせて きつねのすみかの ほらあなにきてみますと 
きつねは 「ぐうぐう」いびき でねていました。 
それでも ものおとでめをさまし、たぬきがきたかとふりかえると にんげんがおおぜいいる 
ので びっくりしてにげようとしましたが、 ほらあなはせまいので これも やすやすとつか 
まりました。
 「たすけてくれ」 とさけびましたが、きく人はありません。 
きつねは めにつばをつけてなきがおをつくってあやまるふり
帰れないよう
をしますが、きいてもらえず、しばられて 山のきこりのおじさん
にわたされました。 きこりのおじさんはとなりの山のきこりの
おじさんにわたし そのつぎも きこりのおじさんにわたしその 
つぎも またそのつぎもと いくつもの山をこえてきたので
きつねが どこをとおったのか わからず かえれなくなってし
まいました。.
たぬきは じぶんがばけかたを ならいたことで、 みんなにめ
いわくをかけたことをはんせいして あう人ごとにあやまつ 
ています。
おばあさんが このたぬきをかわいがって おうちのいぬや
ねことおなじように、にわに わらのはいった はこをつくって   
いっしょにすむようにしました。
たぬきはむらの こどもたちともなかよしになって、げんきにあそんでいます。 まいあさ
おばあさんといっしょに おじぞうさんのそうじをして おばあさんのつくった はなや
おだんごをそなえて 「ぶつぶつ」 となにかいいますが、 きっと おじぞうさんにも 
おそなえを ぬすんだことをあやまっているのでしよう。   
終わり           はじめに戻る